珍地蔵

マスターエム

2012年09月09日 19:51

 *毎日の散歩で、探究心旺盛に目を凝らしていると
案外珍しいものに出会うことがある。

私の散歩コースに、沼津下香貫、塩満と云う「エコ活動」の盛んな地域が在る。
塩満とは字の如く、大昔は塩が満ち干している遠浅の海岸だったと云う。
この町内の中央部に珍しい「お地蔵さん」が在る。

 
 
今は、木立に囲まれた自治会館前に 
歯痛地蔵」と「六地蔵」二つのお地蔵さんが鎮座している。
その昔、大水が出た時この地蔵が、
この地に流され「はっちゃがって」(打ち揚げられたの方言)と云われ、
そこで「はっちゃがり地蔵」と云われる様になり親しまれて来た。

 
  
 「歯痛地蔵」は顔の右側に手をやり、
いかにも歯痛で、頬をさすっている振りをしていて、一般庶民には大変親しまれた。
歯が痛くなった時などは「歯痛地蔵」の頬をさすってやると
歯痛が治まったと昔から云い伝えがある。

 
 「六地蔵」は徳川四代将軍家綱時代、今から約320年前に作られたと推定される。
六地蔵は六道のそれぞれに配られ、能化の主とされる六種の地蔵菩薩が収められている。
天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道そして地獄道がある。
この六地蔵は普通見られる様な天体が横に並ぶのではなく
丸い石柱に沿って天体の地蔵が彫られている、大変珍しい形式のものである。

 「咳地蔵」は「ぎゃあきばあさん」(咳気祖母様)又は「じゃぶきのばあさん」と云われ、
風邪をひいたりした時、昔から「願掛け」して、
全快した時 「こがし」(大麦を焦がし粉にしたもの)や「お茶」をあげたりヤマモモの木の葉で
お地蔵さまの顔に水を掛けたり、お礼をした。

 
 
 「道祖神」はサイノカミとも云って悪い病気や災害を防ぐため、村の入り口に祀られている。
子供達にも親しまれ、その周辺はこどもの遊び場になっていた。
この「道祖神」は貞享元年(1687年)に祀られており
県内では非常に古いものとされている。


 地蔵さんなど、今では御伽噺に出て来そうだが、
当時は「願掛け」や「祀る」ことに真剣に向き合、信仰されて来たと思う。

今時なら歯が痛ければ歯医者に行き、あまり痛さを感じずに治療出来、
安心して暮らせる良き時代になった。

この時代、地蔵さんのお役目は終わったかに思うが、人の心を癒すことに於いては、
まだまだ 大事の存在で「お地蔵さん」はこれからも人々を見守ってくれると思う。