珍地蔵
*毎日の散歩で、探究心旺盛に目を凝らしていると
案外珍しいものに出会うことがある。
私の散歩コースに、沼津下香貫、塩満と云う「エコ活動」の盛んな地域が在る。
塩満とは字の如く、大昔は塩が満ち干している遠浅の海岸だったと云う。
この町内の中央部に珍しい「お地蔵さん」が在る。
今は、木立に囲まれた自治会館前に
「
歯痛地蔵」と「
六地蔵」二つのお地蔵さんが鎮座している。
その昔、大水が出た時この地蔵が、
この地に流され「はっちゃがって」(打ち揚げられたの方言)と云われ、
そこで「
はっちゃがり地蔵」と云われる様になり親しまれて来た。
「
歯痛地蔵」は顔の右側に手をやり、
いかにも歯痛で、頬をさすっている振りをしていて、一般庶民には大変親しまれた。
歯が痛くなった時などは「
歯痛地蔵」の頬をさすってやると
歯痛が治まったと昔から云い伝えがある。
「
六地蔵」は徳川四代将軍家綱時代、今から約320年前に作られたと推定される。
六地蔵は六道のそれぞれに配られ、能化の主とされる六種の地蔵菩薩が収められている。
天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道そして地獄道がある。
この六地蔵は普通見られる様な天体が横に並ぶのではなく
丸い石柱に沿って天体の地蔵が彫られている、大変珍しい形式のものである。
「
咳地蔵」は「ぎゃあきばあさん」(咳気祖母様)又は「じゃぶきのばあさん」と云われ、
風邪をひいたりした時、昔から「願掛け」して、
全快した時 「こがし」(大麦を焦がし粉にしたもの)や「お茶」をあげたりヤマモモの木の葉で
お地蔵さまの顔に水を掛けたり、お礼をした。
「
道祖神」はサイノカミとも云って悪い病気や災害を防ぐため、村の入り口に祀られている。
子供達にも親しまれ、その周辺はこどもの遊び場になっていた。
この「
道祖神」は貞享元年(1687年)に祀られており
県内では非常に古いものとされている。
地蔵さんなど、今では御伽噺に出て来そうだが、
当時は「
願掛け」や「
祀る」ことに真剣に向き合、信仰されて来たと思う。
今時なら歯が痛ければ歯医者に行き、あまり痛さを感じずに治療出来、
安心して暮らせる良き時代になった。
この時代、
地蔵さんのお役目は終わったかに思うが、人の心を癒すことに於いては、
まだまだ 大事の存在で
「お地蔵さん」はこれからも人々を見守ってくれると思う。